第6章 贈り物と日輪刀
リンリンと涼し気な音を奏でていた風鈴は頭に被った傘に幾つも括り付けられており、それより何より風音を驚かせたのは顔に装着されているひょっとこのお面だった。
「お前の目の色、聞いてた通り珍しい色だな!早く日輪刀を持て!緑に染まるに違いない!」
そして第一声がこれ。
しかも風音の顔……瞳を覗き込むように食い気味に前のめりに体を乗り出したものだから、風音は笑顔のまま体を硬直させ実弥は隣りで可笑しそうに笑いを零した。
「鋼鐵塚さん、よく来てくれたなァ。ここじゃなんだから中に入ってくれねェかァ?このままだとコイツが固まったままになっちまって、日輪刀握るも何も出来ねェからな」
「お前は風の呼吸を使うと聞いた。夏の山のようなさぞかし深く綺麗な緑に染まるんだろうな!楽しみだ。何をしている?さっさとこれを受け取れ」
「聞いちゃいねェ……おい、このままじゃここで日輪刀握らされんぞ。お前も固まってねェでこの人中に入れんの手伝え」
日輪刀が入っていると思われる木箱をグイグイ押し付けられ固まっていた風音は実弥の声に我に返り、鋼鐵塚と呼ばれた担当刀鍛冶に頭をぺこりと下げてそっと腕に両手を添えた。
「遥々足を運んでいただいてありがとうございます!中へどうぞ、お茶を出しますので……」
「そんなことは後でいい!早く握れ!」
……結局風音では鋼鐵塚を屋敷内に誘導することが出来ず、実弥があの手この手を使って屋敷内に鋼鐵塚を誘導した。
居間に到着するまで要した時間、十五分。
「さぁ!刀を握れ!」
実弥が腕を引っ張り玄関へ向かう間も、屋敷内の廊下を歩き居間へ案内する間も居間へ腰を落ち着かせる間も、鋼鐵塚はめげることなく風音へと木箱をグイグイと押し付け同じ言葉を繰り返していた。
そしてようやく居間に腰を落ち着けた今はここぞとばかりに更に強く木箱を押し付けてくるものだから、風音や木箱を押し付け続けられる風音のことが少し心配な実弥が茶を用意する暇もない。
「い、今開けさせていただきますね!……実弥さん、中を確認してもいい?」
ようやく木箱を受け取った風音に満足気に頷く鋼鐵塚に苦笑いしながら実弥は頷いた。