第6章 贈り物と日輪刀
「実弥さんと爽籟君が私のために書いてくれたものはお手紙です。絵であれだけ詳しく描けるなんて、本当にちゃんと覚えててくれないと描けないもん。覚えるまで通ってくれてたんだよね?」
まさかの的中だったらしい。
その事がバレないように任務の合間や任務後に足繁くこっそり、屋敷から藤襲山までの道を何度も通り頭に叩き込んでいたのにばれてしまっていた。
真っ赤になり口をぱくぱく動かす実弥の様子から言ったことが当たったのだと分かった風音は飛び付き、恥ずかしさから熱くなった肌に頬を寄せる。
「実弥さん本人や爽籟君はもちろん、二人から貰ったものは私の宝物。柱の方も宝物……あ、昨日宝物が増えちゃいました!楓ちゃんも宝物です」
(宝物増えすぎだろ……いや、まァいいことなんだが……すっげェモヤモヤする)
ニコニコと日増しに増える宝物を語る風音に複雑な想いを抱きながら溜め息を零し、ゆっくりと畳へ体を押し倒した。
しかし風音はそれすら嬉しいらしく、ふわりと覆いかぶさっている実弥の背中に手を回して肩口から顔を出し、すぐ近くにある実弥の頬に自分の頬を擦り寄せる。
「人の気も知らねェで……怪我ァしてなかったら襲ってんぞ」
「襲う……?何か嫌なこと言った……かな?」
ふわふわと頬から首筋にかけて擽っていた髪の動きがピタリと止まったかと思うと、今度は不安げな声が耳元を擽られるものだから実弥はたまったもんじゃない。
モヤモヤとした気持ちは悶々としたものに変わり、風音の体が触れている部分からどんどん熱を帯びていってしまう。
「はァ…… 風音は本っ当に鈍いなァ!こちとら必死に色んなこと抑えてんだ、あんま煽んなよ……ほら、もう体休めろ。無理してっと治るもんも治んねェぞ」
何が何やら分からないと動きを止めたままの風音をそっと起き上がらせ、そのままひょいと抱え上げた。
「??……ねぇ、実弥さん。よく理解できなかったのだけど……怒ってないなら一緒に眠りたい。まだ実弥さんと離れたくない」
本当に理解していなかった。
煩悩と戦い続ける実弥はガクリと肩を落とし……何だかんだいいつつも傷だらけの少女の願いを叶えてやった。