第6章 贈り物と日輪刀
ポカンとして腕の力が弱まった実弥の腕からスポンと抜け出すと、風音は自分の部屋の方へと走り……出そうとして、走ると実弥に叱られると悟り早足で居間を出ていった。
「相変わらず落ち着きねぇ奴だなァ……一人で出掛けたのあの時の山と最終選別だけだったはずだが……渡したいもんって何だァ?ん?あいつ何か落として行きやがった」
床にピラリと落ちている紙を拾い、思わず全力の握力で握りつぶしそうになってしまった。
丁寧に四つ折りにされている紙には、見覚えのある墨をつけた羽で擦ったあとのあるものだったからだ。
「俺が渡した地図じゃねェかァ!何でこんなもん後生大事に持ち歩いてんだよ!……やっぱアイツの思考回路いまいち理解出来ねェわ」
自分が描いたものとはいえ風音へと渡し、風音が何を思ってか何故か大切に持ち歩いているものを丸めて捨てる気にはなれず、コソッと居間に置かれたままの鞄の隙間から差し入れた。
初めてのお手紙だと喜んでいたことを知らない実弥をよそに、風音は満面の笑みで居間へと戻って来て実弥の前に手を後ろに組んで立ち塞がる。
「渡してェもんって何だァ?」
「全然大した物じゃないんだけど……むしろ貰っても困るかもしれないんだけどね……コレ、作ったの」
差し出されたのは綺麗に色付いた葉を栞にしたものだった。
「前に一人で山に行ったでしょ?その時に傷がなくてキレイな落ち葉を拾って鞄の中に入れてたの。色々あって作るの遅くなったんだけど……凄く綺麗に出来たから実弥さんにって……」
自信なさげに尻すぼみになる言葉に伴い下へさがる手を握って止め、指に摘まれた栞をそっと受け取った。
「器用なもんだなァ。あんま本とか読まねェけど…… 風音が作ってくれたんなら受け取っとく。わざわざありがとなァ」
目尻を下げて柔らかく笑ってくれた実弥に風音は頬を赤く染めてふわりと微笑み返した。
「受け取ってもらえてよかった。私の分も作ってるから実はお揃いなんだよ!初めてのお揃いだね!」