第6章 贈り物と日輪刀
「皆さんが?もうお礼を言うだけじゃ足りないよ!何か他に喜んでもらえることないかな?実弥さんは何が嬉しい?お金はあんまりないけど……出来ることなら何でもするから教えてほしい!ねぇ、実弥さんは何が一番嬉しいの?」
涙で目をキラキラ輝かせながら見上げてくる風音に笑みを零し、親指でそっと涙を拭ってやると額に自分の額を合わせる。
「何も要らねェよ。元気に締まりねェ笑顔でいてくれりゃあ何も要らねェ……死んでくれんなよ。もう大切に想う奴が目の前からいなくなんのは勘弁だ」
誰を想い発した言葉なのか。
亡くなってしまった家族はもちろんだろうが、実弥の心の中には他の人も映っているように風音には見えた。
(誰か……ご家族以外にも大切な人を亡くしてしまったの?そんなこと聞けないけど……もしそうだったのなら、その方はきっと素敵で優しい人だったんだろうな)
心の中で思ったことは踏み込んでいい領分を超えているように思えたので、風音は疑問を胸にしまい込んだ。
「死なないよ。私はしぶといから死なない……と言うか死ねないと思う。実弥さんがいっぱい幸せになって、いっぱい笑顔になる姿を目にしたい」
「何言ってんだァ?側にいれば見れるじゃねぇか。俺が軽々しく……その……愛しいなんて小っ恥ずかしい言葉言うと思ってんのか?どうすりゃ信じんだよ……接吻だけじゃ信じれねェかァ?」
かと言って男女の沙汰にとてつもなく疎い風音にこれ以上を望むのは憚られるので、結局何も思い付かなかった。
(アイツらならどうしてやんだァ?宇髄は……ありゃ駄目だ。とんでもねぇことしそうだしなァ。煉獄は恥ずかしげもなく相手が喜ぶ言葉言って……伊黒は美味い飯屋連れてく、悲鳴嶼さんは……想像つかねェ。冨岡……俺より喋んねぇから論外だ)
いくら考えても参考になる人物は近くにいない。
一人悶々と考えていると風音の手がヒラヒラと目の前で舞った。
「実弥さん、実弥さん。側にいさせてもらうのはもちろんです!言葉の綾。そのままの……今の実弥さんが大好きだから変わらないでいてほしい。あ!少し待ってて?実弥さんに渡したい物があるの」