第6章 贈り物と日輪刀
風音の瞳いっぱいに映し出されたのは美しい紫の花を咲かせる藤の花だった。
いつの日かお館様のお屋敷で咲いていた藤の花を見て薬がたくさん作れそうだと呟いた時、毒を飲まないならば庭に植えてやると言ってくれた藤の花の木を本当に庭に植えてくれていたのだ。
「実弥さん……本当に植えてくれたの?どうして……だって私、実弥さんに何も出来てないのに」
「あ"ぁ"?お前に何かやるのに理由いるかァ?嫌じゃねェならいつも通り締まりねェ笑顔で喜ん……泣くのかよォ。どうなってんだァ?そんな嫌だった……」
実弥の体にふわりとした衝撃と温かさが広がった。
どうして泣くのかと視線を床に落とした瞬間だったので一瞬何が起こったのか分からなかったが、視界が柔らかな金色で満たされたので何が起こったのか理解出来た。
「喜んでる……でいいんだよなァ?」
外国の血を体に宿し、かつて幸せで暖かで愛情表現が豊かな家庭で育ったことが要因なのか。
人前ではしないものの、二人の時は惜しげも無く感情を露わにして抱き着いてきている風音の肩に腕を回してホッと息をついた。
「うん!すごく喜んでる!嬉しすぎて涙出ちゃうくらい喜んでる!毒は飲まないけど、色々調合して鬼に効く藤の花の毒が作れるかもしれない!」
「そうかィ。なら柱の奴らに会った時に礼言っとけ。アイツら俺が狂い咲きする藤の木探してるってどっからか嗅ぎつけて、一緒になって探してくれたからなァ。……運んできたのは煉獄と宇髄と甘露寺だ」
ちなみに柱たちの反応は
『不死川が女子に贈り物?!目出度い!それは是非とも協力せねば!お館様に何処に木があるか聞いてみるか?それとも藤の花の家紋の家の主人に分けてくれと願うか?』
とそれぞれが思い思いに行動を起こして見つけ、実弥に知らせて……結局藤の花の家紋の家の主人に、庭に植えていた木を分けてもらい実弥の屋敷へ運んだのである。
杏寿郎と天元と蜜璃が。
その時の柱の生暖かい視線を思い出すと何となく腹立たしくなったが、胸元から顔を覗かせて満面の笑みを自分に向ける風音を見ていると苛立ちも実弥の中から消え去るのだから不思議なものだ。