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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


花という人物が実弥にはどのような人物かは分からない。
しかし人と深い繋がりを持つことを生まれ持った力が原因で良しとされない中、それでも仲を深めたかったと言うくらいだ。
短い時間の中でも風音にとって大切にしたいと思える遣り取りがあったのだということだけは実弥にも分かった。

(最終選別で気ぃ緩められんの明け方くれぇだろォ……鬼探して倒し続けてりゃ気ぃ緩めたくなんの仕方ねェってのに……)

それを言ったとて慰めにすらならない。
そんなこと本人が一番分かっているだろうから……それでも悔しくて悔やまれて、どうにも出来ない感情を吐露しているのだ。

苦しみもがいて涙を流し続ける風音を胸の中に誘い、止まらない言葉に耳を傾ける。

「どんなに痛く苦しかったんだろう、どんなに生きたいと願ったんだろうって考えると胸が張り裂けそうっ。考えても悔やんでも花ちゃんは生き返らないって分かってるけど、感情が追いつかない。鬼を苦しめ続けてやるって決めたことも貫けなかった自分が一番許せない!」

まくし立てる風音の声がだんだん大きくなり、力んだ体がピクリと震えた。
平気だと言い張っていた傷が力んだことにより痛みを伴ったのだろう。

怪我がない状態ならばいくらでも言葉を聞いてやっていたが、まずは落ち着けなくては体に悪影響を及ぼすと考えた実弥は抱き寄せる腕に僅かに力を入れて頭に手をポンと置いた。

「お前怪我してんのにあんま興奮すんなァ……こう言っちゃ救いもなんもねェけど、鬼殺隊に身を置けばそんな思いすることなんてざらにある。自分を許せなくても助けられなかったことを悔やんでも構わねェ。ただ立ち止まんな、ここで立ち止まっちまえば剣士なんてやってらんねェぞ」

柱まで上り詰めた実弥の言葉に反発心が沸くわけがなかった。
自分より長い時間鬼殺隊の剣士として、柱として多くの憤りや悲しみ、辛酸を舐め続けているに違いないから。

「はい……せめて剣士となって誰かの力に……と決めたことは貫きます。お父さんのこともあるし、立ち止まりません。怪我が治ったら実弥さんがしているのと同じものを私に課してください。絶対に途中で音を上げることをしないと誓います」
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