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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


実弥と同じものを課されると言うことは柱としての体力や力量があってこそ成り立っている鍛錬を課されることを意味している。

病み上がりで出来るものではない。

「あのなァ……無理すりゃいいってもんじゃねェって分かってんだろ?選別前にも言ったが焦んな。まァ……でも気持ちは分からんでもねェ。そんだけ花って子がお前にとって特別だったんだろォ?」

普通に生活をしている人ならばしてもらって当たり前のこと。
その対応をしてもらえたことが風音にとっては特別だったのだ。

「うん。力のことは話してないから抜きとして、見た目のことを何も言われなかったの。もちろん好意的な言葉は嬉しいのだけど……それと同じくらい見た目のことに頓着されないことが嬉しかったんです。あの……今更なのですが、もう少しこのまま居させてもらいたい……です。実弥さんが足りない」

落ち着きを取り戻し涙も止まった風音は実弥の背中に手を回し、まるで心臓の音と体温を確認するかのように胸元に頬を寄せた。

稽古の時以外は基本的に好きなように望むままさせてやっている実弥は、引き離して布団に追い込んだところで涙を再び流してしまうことが簡単に予測出来たので、いつも通り望むままさせてやることにした。

「別に今更改まって願うことでもねェだろ。……元々お前は疎まれるような性格してねェんだ。見た目をどうこう言ってくる奴なんて放っておきゃいい。言われて傷付くなら俺が言い返してやらァ」

「フフッ、至れり尽くせりですね。本当に優しい……私には勿体ないくらいに。大好き……です」

変わらず愛情表現を恥ずかしげもなく前面に押し出す風音には慣れたもの。
だからと言って嬉しくないわけもなく、恥ずかしくて同じ言葉を口に出せない代わりに風音を包み込むように自分の背を丸めて負担のない程度に体を預ける。

「別に優しかねェよ。弟子を守んのは師範、女守んのは男として当たり前だろうが。そんなちっせぇことで喜んでっとずっと喜びっぱなしになんぞ」

「実弥さんの側にいられる時はいつも喜んでます。ずっと喜びっぱなしです。はぁ……あったかくて安心出来ます」

一週間という短いような長いような期間を経て実弥に触れられた風音は、その間に受けた心の傷を包み込んでくれている温かさで少しずつ癒していった。
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