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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


藤の花の家紋の家にて待機してもらっていた医者に診せると、幸いにも腹の傷は何処で学んだと医者も首を傾げる適切な処置で大事には至っていなかった。

しかし抜糸出来るまで……吐血するほどの衝撃を受けた内臓がしっかり治るまで絶対安静を命じられた。

ちなみに無理をして体についてしまった多くの傷は包帯で覆われているので、一見すると重病人のようである。

「凄まじい見た目だなァ……腹の傷、痛まねェのかよ?」

医者と入れ替わりに風音が休んでいる部屋に入った実弥は、包帯で全身を覆われながら布団の上で上体を起こし座っている姿に眉を寄せた。
それほどまでにとんでもない様相なのだ。

「見た目だけです。お腹もほぼ治っているようなので痛くありません……私は……これくらい平気です」

平気だと言っているのに全く平気な表情には見えず、実弥は自分も布団の上に身を置いて頬を軽く摘んだ。
いつもなら柔らかな感覚を楽しんでいたが、今はそんな気にはとてもなれず風音の顔を覗き込む。

「お前ん中で何が一番辛かったァ?受験者が何人も死んだことか?それとも……友達になりたかった奴を助けられなかったことかァ?」

もちろん受験者が何人も亡くなってしまったことは風音にとって悲しく辛い。
どんなに頑張って鬼を倒しても、力が及ばなかったということだから……

「どっちも辛い……でも目の前で花ちゃんが鬼に命を奪われて……夜明け前だからって言って気を緩めなければ助けられたかもしれない。せめてその鬼を……私の血で苦しませて死なせようと思ったのに。それすら出来なかったんです……憎くて憎くて仕方なかったはずなのに何でかなって思ってたけど、今分かった」

辛うじて瞳で留まっていた涙は瞼をキュッと閉じたことによって頬へ流れ落ち、それに伴って表情も悲しく歪む。

「一番嫌だったのは私が間に合わなかったことだったんです。私が気さえ緩めなければ、約束を守れたんだ。一緒にご飯を食べて……お名前を直接聞いて言えた……今も冷たい土の中じゃなくて、あったかいお日様の下を笑顔で歩けてたかもしれない。お友達に……なりたかったの」
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