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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


話はまだ終わっていないものの、日々殺伐とした世界に身を投じている実弥には今の穏やかな空間がひどく心地よく感じてしまった。
本来なら風音にとって一番害となり得る自分が離れなくてはならない。

今現在で風音が一番信頼を置き慕っているのは実弥である。
その事実と父親の件が重なり今回の自体を招いてしまったのだ。

どう考えても突き放して屋敷から出してしまう方が風音の命を救うならば手っ取り早い。

しかし口付けを終えてから、まるで引き離さないでと言うようにしがみついてくる風音の腕を振り払えなかった。

「いつも心配ばかりかけてしまって……ごめんなさい。頑張るって言葉だけなら簡単に言えてしまうから、結果を必ず実弥さんに見せます。最終選別も生き残って帰るし、今回の件を参考に少しずつでも感覚共有を切り離してみせます。もう少し……私に猶予をください」

(引き離さないで……って願うだけじゃねェのかよ。感情だけで願われたらこの手を振り払えただろうに。……俺がそう言うの好かねェって知ってんのか?)

知っているとまではいかないが、普段実弥と接していて何となく感じ取り無意識に発した言葉なのだろう。
鬼殺隊に関することで情に絆されるほど実弥は甘い性格ではないと、日々の稽古の様子が物語っているからだ。

「最終選別に生き残んのは当たり前だろうが。猶予っつうか……お前が焦ってとんでもない事をしでかさねェか見といてやるよ。焦んな、途中で風音を放り出すようなことはしねェから……爽籟がやかましいからな……」

部屋の中に爽籟はいない。
部屋の中にはいないが、実弥の言動を見張るかのように数分前から窓から様子を伺っている。

それに気付いていない風音は小さく笑って実弥を見上げた。

「ありがとうございます。焦らず頑張ってみますね。それにしても……傷口が少し痒い。どうなって……いひゃい……鼻が高くなりそう……すみません、気になったんです」

そして傷口を確認しようとして実弥に鼻をつままれる。
こういったところを先にどうにかしなければ実弥の身が持たない。

「なるわけねぇだろうが。てかお前、その傷で最終選別行くつもりかァ?……そう言えばお前の血は鬼からすれば毒だったなァ。襲われはしねぇだろうが、最終選別の意味なくねぇか?」
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