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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


「私は……初めは実弥さんがいてくれればそれだけで幸せだったんです。でも柱の方も実弥さんと同じように優しくして下さって……下弦の鬼を父に持つ私なんかを……拒むことなく受け入れてくださって、痩せ細っているからって栄養のあるものをたくさん……持ってきてくれたでしょう?そんな優しい人たちの力に少しでもなりたいなって……」

ついに涙がポロポロと瞳から零れてしまったので、実弥は腹の傷が痛まないよう慎重に風音を抱え上げて胸の中におさめてやった。
そしてそのまま風音の声に耳を傾ける。

「その気持ちは今でも変わりません。知らない誰かのために命を懸ける……人を大切にしている方々の力になりたい。だから……どうか止めないで。実弥さんに止められたら……私は……」

「俺ん家飛び出して最終選別に行くつもりだろ?」

実弥の言葉に風音の体がピクリと跳ねた。
予想していた通り、柱にでも縛り付けていなければ明日にでも飛び出されていたらしい。

「はァ……お前、今どういう状況に置かれてんのか分かってんのかァ?鬼殺隊入ったら人の先見て死んじまうかもしれねぇんだぞ」

「それは……そうですけど……でも」

「諦めてくんねェか……って言えば風音の心は壊れちまうのか?俺ん家から飛び出して一人で……壊れちまったまま剣士してくのかよ?」

初めて聞く実弥の僅かに震えた声に風音は顔を上げて、両手で頬をそっと包み込んだ。

「壊れないよ。私の心は実弥さんの優しい言葉で壊れるわけがない。嫌われたら……悲しくて悲しくてどうにかなっちゃうと思うけど。私が家を飛び出すのはね、実弥さんの気持ちを無視して勝手をするなら実弥さんのお家に居座るなんて……図々しいことが出来ないからだよ。だから……そんな悲しい顔をしないで」

共に生活を初めて早一年弱。
初めて自分に全く敬語を使わない風音に驚き目を見開いた直後、頭突きによってまだ少し赤みの残る額に口付けを落とした。

「実弥さん?フフッ、私、実弥さんに口付けしてもらうの大好き。すごく幸せな気持ちになるの。ずっとしててほしいくらい」

そう言って風音は顔を少しずらし、実弥の唇に自分の唇を重ねた。
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