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涼風の残響【鬼滅の刃】

第2章 柱


(マジかよ……俺ん家まで走り切りやがった。今にもぶっ倒れそうだが……)

実弥の屋敷の前へ到着した風音は全身汗だくで、フラフラと危なげに体を左右に揺らしている。
それでも実弥に迷惑をかけまいとガクガク震える足を必死に踏ん張り肩で息をしていた。

「お前の薬作りに対する飽くなき精神には恐れ入るわ……とりあえずよく頑張ったなァ、運んでやるから大人しくしとけよ。抵抗すんな、暴れんな」

風音には抵抗する力も暴れる力も残ってはおらず、なんなら言葉を発する力さえ残ってはいない。
そんな様子を確認した実弥は揺れる体を抱え上げて門を開き、一人暮らしにしてはとてつもなく広い屋敷へと足を踏み入れた。

外から見ても大きな屋敷は中に入ってもやはりとても広く、借りてきた猫のように大人しくしている風音はキョロキョロと辺りを見回していた。

「女が見て喜ぶもんはねぇけど生活すんのに必要なもんは揃ってる。この屋敷内のは好きに使って構わねェ。風呂や厠はあっち、台所はその先を曲がったとこだ。先に風呂入って疲れとってこい、カランを回せば湯が出るから……」

やけに静かで話の途中から動かないと思えば、心身共に疲れ果てていた風音は実弥に抱えられたまま器用に寝息を立てている。

「えぇ……このまま寝んのかよォ。俺にどうしろってんだ、クソがァ……」

小さく悪態をついたところで風音が起きる気配は全くない。

実弥はため息を着きながら風音に与えようと考えていた部屋へと入り、床へ腰を下ろして気持ちよさそうに眠り続ける風音を脚の上に座らせた。

「はぁぁあ……子供じゃねぇんだからここで寝んなよなァ。おい、布団敷いてやるからちょっと起きろ。……起きやがらねェ……どんな神経してんだ!?男の家だぞ……」

「んん……もう少し……お母さん」

「俺の性別なんだと思ってやがる……しゃあねぇなァ、あと少しだけだかんな」

呆れつつも人肌が思っていたより心地良く、次第に実弥の瞼は重さを増していく。

(あぁ……ヤベェ。俺も眠っちまいそうだ)

そう思っている間にも瞼は徐々に閉じられていき、今日初めて出会った二人は広い屋敷で身を寄せあって眠りについた。
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