第5章 試験と最終選別
起き上がっていたならば支えてあげないとフラフラ体を揺らしていたのだろうと分かるくらい首元まで真っ赤に染め、全身が熱くなっている。
その熱が実弥の体まで熱くし、頭の中まで熱を帯びさせてしまった。
(まだ……これ以上は出来ねェか)
戸惑い瞼を閉じ続ける風音から唇を離し顔を見つめていると、数秒後にようやく翡翠色の瞳がゆっくりと姿を現した。
「……平気かァ?」
「ん……こういうのは全部実弥さんにしてもらうのが初めてなので……ビックリしたけど、頭の中が溶けちゃいそうなくらい熱くなって……でも心地よかった……です」
まだ赤さの残る顔をふにゃりと緩め笑顔を覗かせたので、それにつられるように実弥もふわりと笑みを向けて風音の頭を抱きかかえ胸元に誘った。
「そっかァ。トラウマになってねェなら何よりだ。眠ぃなら部屋まで運んでやっから布団で寝ろ。任務に出る時は声掛けるから……」
「そんな勿体ないこと出来ません!お昼ご飯と夜ご飯を作って、実弥さんを万全の体制でお見送りしたいので!先を見て危険を……退けたい……あれ……止まらない」
いつも無理をするなと実弥に言われているので、心配をかけないように鬼がどんな血鬼術を使うかだけ伝えていた。
それ以上見てしまえば実弥独自の戦闘方法により痛みを体に感じてしまうからだ。
それに今までは実弥の肌に触れて、先を見ようとする自分の意思があって見られていたのに、今はその意思と関係なく風音の頭に実弥の任務の様子が流れてしまっている。
「止まんねぇって……ちょっと離れろ!俺に触らなけりゃ止まるかもしんねぇだろ!」
様子のおかしい風音を起き上がらせて体を離すも、風音は体を震わせて痛みをこらえているように見える。
触れてもいない、本人が見たいと望んだわけでもないのに……
「止まらない……うぅ、実弥さん。今日の任務の鬼……気を付けて。お腹……怪我する……痛……えっと、遠距離型の攻撃を仕掛けてくるので……」
「もういい、喋んな!クソ、どうすればいい?!胡蝶……爽籟、爽籟!胡蝶に使いを頼む!爽籟!」
近くにいなかったのか爽籟が実弥の元に到着したのは数分後で、慌てる実弥と苦しみ続けている風音の姿を目にし、再び空へと慌てて飛び立ちしのぶを最速で呼ぶために他の多くの鎹鴉に助けを願った。