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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


その痛みに蓋をして攻撃を仕掛けようとしている鬼に応戦するため、握り締めたままだった刀を振り上げて技の構えを取る。

「風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵……」

「風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐!」

背後にいたはずの実弥が気が付けば目の前にいて、風音の技など比べ物にならないほどの威力の技を繰り出した。
広範囲、高威力の技に鬼も苦戦しているようで、今はその対処に追われているのだろう……弾き返す音が鳴り響いている。

「もういい、下がってろ。お前が俺を守ろうなんざ百年早ェんだよ!鬼殺隊剣士の役目は鬼を倒すことなんでなァ、その鬼がかつてどんな人間だったかなんて関係ねェ。下弦の鬼相手なんぞ鬼殺隊にすら入ってねぇお前の出る幕じゃない。俺の指示に従って待機してろ、風音」

「実弥さん……私はただ……」

「風音……?」

実弥ではない声に名前を呼ばれそちらを向くと、鬼と化した父親が苦悶の表情を浮かべて風音を見つめていた。

「風音……俺は……鬼になんて……せめて人のまま君たちのいる家に……」

帰りたかった。

続けたかった言葉は紡がれなかったが、声音や表情から痛いほど伝わる。

「……私もこんな形じゃなくて、笑顔で元気に……帰ってくるお父さんに会いたかった。もっと早く……見つけてあげたかった」

悲しく痛みをもよおす親子の遣り取りを見守ってやりたいが、目の前にいるのは数え切れないほどの人を喰い十二鬼月にまで堕ちた元鬼殺隊剣士だ。
柱としていつまでも見守ってやることなど出来ない。

「見るの辛かったら目ぇ塞いどけ。親の頸が落ちるとこなんて寝覚め悪ぃだけだからなァ……さっさと……?!」

鬼を滅して帰るぞと言いかけた実弥はもちろん、父親から実弥に視線を移そうとしていた風音も目の前の非現実的で信じ難い光景に目を見開いた。

いきなり何もないはずの空間に障子が現れ、中から大量の鬼が排出されてきたからだ……まるで下弦の鬼を庇うように。

「どうなってやがる!クソ、お前も技出せるだけ出せ!自分の身を守ることだけ考えてなァ!」

「は、はい!実弥さん、雑魚鬼は私でどうにかします!だから実弥さんは構わずあの障子をお願いします!このままじゃ……」
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