第5章 試験と最終選別
二日目、三日目共に無事に課題をこなすことが出来ていた。
二日目に髪を数本切られはしたものの、血を流してはいないからとギリギリ合格を貰えた時の風音の体は震えていたそうな。
そして本日が課題の最終日である。
最終選別も二日後に控えているので、風音の緊張が最高潮に達していた。
「今日は街中なんですね。寝静まっているとはいえ、人が近くにいる状態で鬼の相手をするのは初めてなので緊張します」
「街中でもやることは変わんねェよ。鬼殺隊入って任務行けば人里だったり街ん中だったり……人がいる状況なんて珍しくねェ。経験しとくに越したことはない」
今までの課題では廃村や山の中など人がいない状況だったので、命ある人が近くにいると思うと緊張していたのが更に緊張してしまう。
しかし実弥の言う通り任務に赴けば現場に人がいるのは珍しいことではないはずなので、いつも通りゆっくり呼吸をして気持ちを落ち着けた。
「そうですよね。ではいつもより気を引き締めて……」
鬼を捜索しようと一歩踏み出したところで、絹を引き裂くような悲鳴が二人の耳を刺激した。
風音の捜索を頼っていては間に合わないと判断した実弥は、血を使うまでもなく鬼の気配を感覚で察知し、声がした方、察知した方角へと目にも留まらぬ速さで駆けて行った。
「私も行かないと」
踏み出していた足を踏み締め実弥が向かった方へと足を動かすと、既に鬼を倒したのか鬼の姿は見当たらず、実弥は被害者と思われる女性に応急処置を施しているところであった……全力で抵抗する女性を相手にだ。
「おい、この人の手当てしてやってくれねェか?俺見て怯えて手当てが進まねェんだァ……」
「え?あ、はい。もちろんです」
助けてくれた人を怯えるほどに混乱しているのか?
興奮状態が続いていてただ実弥を拒んでいるのか?
疑問は尽きないが可哀想な程に怯え涙を流す女性と、その女性をどうしたものかと悩んでいる実弥をいつまでも放っておくことが出来ず、駆け足で二人に駆け寄って女性を引き取った。
「もう大丈夫です。怪我をしているのは腕だけですね?」
鋭利な何かで傷付けられた場所からは血が流れているものの、深い傷ではないようで風音は胸をなで下ろした。