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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


その瞬間、風音の目の前で閃光が走った。

閃光と共に幾度となく金属がぶつかり合うような音が辺り一帯に響き渡り、風音は実弥の邪魔にならないようにと距離をとる。

「出やがったなァ、塵屑がァ!テメェ一体で俺を倒せると思ってんのか?!風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪!」

実弥の血の匂いに誘われて現れたのは、かつては女性だったと思われる様相の鬼だった。
鬼の特徴である縦長の瞳孔を持ち、人には持ち得ない牙や鋭い爪を使って実弥に襲いかかっていたのだが、日輪刀を振り終わったと思えば首は既に地面へと転がり落ちていた。

鬼自身もまさか一言も発せないまま頸を斬られるなど思ってもみなかったようで、塵と化していく自分の離れてしまった体を呆然と眺めている。

「テメェみたいな雑魚が俺に傷の一つもつけれるわけねェだろうがァ!さっさと消えろ。鬼が目の前にいるだけで胸糞悪ィ」

「あんた……柱、なの?」

鬼の世界でも鬼殺隊の柱は知れ渡っているのかもしれない。
自分たちの身に多大な危険を及ぼす存在なので、知れ渡っていたとしても頷けるが……

「いっちょ前に話し掛けてくんな。お前の役目は俺と風音の前からとっとと消え失せることだけだァ!人喰ってんだろ?最期まで苦しんでから消えてくれやァ」

そして鬼は実弥から質問の答えすら教えてもらえず、使えたであろう血鬼術も使えぬまま悪態だけを耳にして風に流されて消滅した。

「……雑魚が。準備運動にすらなりゃしねェ。おい、しっかり見てたんだろうなァ?」

鬼を目にして滅した後だからか実弥は軽い興奮状態で、口調や目付き、雰囲気がいつもより刺々しい。
実弥の鬼に対する底知れぬ嫌悪感を目にした風音は、その気持ちを少しでも和らげようと側へ歩み寄って、自分で切り裂き血の流れている方の手を自身の両手で包み込んだ。

「見ていました。早過ぎて驚きましたが、しっかりと目と頭に焼き付けてます。ありがとうございます、明日からの課題の参考にさせてもらいますね。……もう鬼はいません、気を緩めて大丈夫です。ずっと昂ったままだと実弥さんが疲れてしまいます」

未だに興奮が冷めない実弥から手を離し、襟元から小さな容器を取り出して中に入れておいた軟膏をそっと傷口に塗り込んだ。

「んなことで疲れっかよ……てか任務終わったと勘違いしてねェか?」
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