第5章 試験と最終選別
辿り着いたのは薄暗い廃村。
人がこの地を去ってから数年は経っているだろうと想像出来るほどに廃れており、家屋は朽ちていて少しの衝撃でも崩れ落ちそうである。
「爽籟、お前はここで見張りを頼む。……ぉい、そいつに引っ付いてたら見張れねぇだろうがァ!今日は俺が鬼狩るんだから心配すんなよ!そいつは少し離れて見学だっつぅの」
「……課題ガ厳シイ!」
例の如く風音の首元に羽を広げて巻き付いていた爽籟は、実弥にちょっとした不満を漏らしてフイッと夜空へ羽ばたき身を溶け込ませていった。
「……やっと行きやがった。おら、お前も何笑ってんだァ?!課題すらなくして家に閉じ込めてやろうかァ?!」
なんととばっちりを受けてしまった。
ただ風音は首元に巻き付いていた爽籟が可愛らしく、フイッと飛びだった姿も可愛らしかったから笑顔だっただけなのに……
しかしそんな言い訳をしたとしても良くない結果が予想されたので、ここは素直に謝っておくことにした。
「すみません!家に閉じ込められてしまうのは悲しいので、しっかり実弥さんのお仕事を目に焼き付けさせていただきます!ところでこの村のどこかに鬼がいるんですか?」
ぺこりと頭を下げた風音にいつまでも怒ったとしても悲しませるだけ……ちなみに八つ当たりだと実弥本人も自覚してるので小さく息を零して気持ちを切り替える。
「爽籟が持ってきた内容に間違いなけりゃあ……そうなるなァ。お前もいつでも抜刀出来る準備は整えとけよ。今から塵屑を誘き出す」
そう言うと実弥は日輪刀を抜き出して左の人差し指に刃をあてて横に滑らせ、自らの血を流し出した。
(私には絶対出来ない戦い方……私の血は鬼にとって毒だから流したと同時に逃げ出す可能性が高いからなぁ……強くなれば上手く使えるかもしれないけど、今の私にとっては宝の持ち腐れ)
だからと言ってそれを嘆いていても仕方なく、また今はもうすぐ出てくるであろう鬼を実弥が倒す姿を目と脳に焼き付けなくてはならない。
考え事などしていては明日からの課題に影響を及ぼす可能性が高いので、既に日輪刀を握り締め辺りを警戒している実弥にならい、風音も腰に差してある刀の柄に手を当てた。