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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


ふにゃりと笑い抱きしめて欲しいと言わんばかりに下から腕を伸ばす風音に、実弥は呆れたように溜め息を零して腕の力を抜き温かな体に自らの体を重ね合わせた。

「お前の意思硬ぇなァ……俺に毎日毎日怒鳴られようが扱かれようが、今みてェにやんわり鬼殺隊から離れてくんねェかって言おうが聞きやしねェ。……最終選別、無事に戻ってこい。継子にして死なねェように死ぬほど鍛えてやるからよォ」

心地よくふわりと抱き寄せてくれている実弥からは先ほどまでの張り詰めた雰囲気がなくなり、それに伴って口調や声音も穏やかになったので風音は更に笑顔を深め実弥の肩口に顔を埋めた。

「うん。実弥さんに恥をかかせるなんてとんでもないので、必ず戻ってきます……その前に課題の方を乗り越えなきゃですけど。本格的に鬼の頸を斬るのは明日から……今日しっかり実弥さんの動きを見ておかないと」

今日から開始される課題に緊張もするし課題がこなせるかなどの不安がないと言えば嘘になるが、本人にそのつもりがなくても実弥がこうして心地よい重さだけを自分の体に預けてくれているだけでそれらが和らぐような気がして、風音は僅かに顔を擦り寄せた。

「猫かよ……まァ何にしてもだァ、課題は全力でやるこった。お前に万が一にでも出来ねェことを課してる訳じゃ……ねェからよ」

つまり普段の風音の力量を鑑みてギリギリこなせるであろう課題を出してくれているということだ。

日々の様子をしっかり見てくれているからこそ今回の課題を出されたのであれば、風音とすれば実弥の言う通り全力で挑むしかない。

「頑張ります!……このまま少し寝たい気持ちは大いにあるんですけど、少しでも力を付けるために朝のお稽古の続きをしておきます。実弥さんは夜の任務のために休んでいてください」

せめて離れる前にもう少し……と背にまわした腕に力を入れた風音の頭を撫で、実弥は起き上がって手を差し伸べた。

「お前が稽古すんのに俺が休んでられっか。ほら、道場行くぞ」

「はい!ありがとうございます」

それから風音は実弥に見立ててもらった袴で稽古を開始し、夕刻前には実弥と共に鬼狩りの地へと旅立った。
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