第5章 試験と最終選別
「……早く知ろうが今知ろうがやること変わんねェんだから構わねェだろうがァ。ついでに最終選別前にお前にしてもらうことあんだわ」
最終選別だけでも気持ち的に一杯一杯でふわふわと体を揺らしていても容赦なく…… 風音へと実弥が言葉を続けた。
「俺の今日の任務からお前も着いて来い。最終選別前に俺から出される課題をこなしてみろ。こなせねェようなら最終選別には行かせねェし、今後一切剣士を目指すことを許さねェ」
「え……それってどういう意味ですか?」
課題を出されることまではどうにか受け入れられた。
その課題をこなさなければ最終選別に行かせないと言うのも、理解出来るし仕方がないと思えた。
しかし課題をこなせなかった場合……剣士を目指すことすら許さないと言う言葉だけはどうしても受け入れたくなかった。
そんな悲壮に満ちた風音の表情を見ても、実弥の表情は冗談など一切感じ取れない真剣な表情のままである。
「どういう意味もそのまんまだ。元々常中使えるお前に柱の俺が今日まで稽古付けただろうが。他に受験する奴らよりどう考えても恵まれた環境下で課題すらこなせねェ奴が、それ以上伸びると思うかァ?」
言葉を返したくとも風音には返せるほどの言葉は思い浮かばない。
実弥のいっていることは最もだからだ。
柱直々に常中を使える人間が稽古を付けてもらっていたのに、課題をこなせないならば才能がないのだろう。
何度か最終選別を見送りいつの日か……なんて悠長に構えられるほど柱は暇ではないのだから。
「課題は俺の任務に五日間同行して、初日以外に出る雑魚鬼の頸を無傷で全て斬ることだ。血鬼術使う鬼は俺が斬ってやるから難しくないだろォ。血が出た時点で課題終了、何でかは分かるよなァ?」
「……はい。私の血は鬼にとって毒なので、それに頼っては後々に使えない状況が出てきた時……木偶の坊になるからですよね?」
実弥が自らの血をつかって鬼を倒しているとは言っても、それはそれに見合った力量があるから出来ることだ。
血を使えない状況でも柱である実弥は強い……技を見せてもらった時、嫌というほど理解した事実である。
「そう言うこったァ。今日は俺がどうやって鬼を倒してんのか見て覚えろ。分かったかァ?」