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涼風の残響【鬼滅の刃】

第5章 試験と最終選別


混乱する風音をよそにあれよあれよという間に着ていた着物は壁に掛けられ、現在身に纏っているのは袴である。

裾にかけて深緑に染まるぼかしの袴に、白や赤の菊が描かれた着物。
菊は袴にも小さく幾つか刺繍が施されていて、風音は体をカタカタと震わせている。

「大きさは大丈夫そうね!さ、お店に戻りましょうか。不死川さんがお待ちになられていますから」

冷や汗を流すことさえ必死に抑えて震える風音の手は再び店主によって引っ張られ、店へと強制的に連行されて行く。
実弥に質問に答えてもらえず訳の分からないまま着物を脱がされ袴を着せられた風音は、歩を進めながら楽しそうに手を引っ張り続ける店主にようやく言葉をかけることが出来た。

「この袴は実弥さんが用意してくれたのでしょうか?どうして袴なんて突然……」

「あら?聞いてなかったのね……柊木さん、鬼殺隊の剣士になるために最終選別受けるんでしょう?着物とか浴衣しか持ってないからって、不死川さんが柊木さんのために見立ててくれたのよ」

立ち止まり笑顔で振り返る店主の言葉は鬼殺隊という組織を知っているものだった。
更に混乱する情報が風音にもたらされるが、店主から袴へと視線を落として気持ちを落ち着かせてから頭の中を整理する。

すると外で見た看板が風音の脳裏に甦った。

「ここ……藤の花の家紋の家だったんですね。確か鬼殺隊に過去鬼から助けてもらった方々が、鬼殺隊の人たちを支えてくださってると聞いたことがあります」

「そう。ここは数年前に鬼殺隊に鬼から助けてもらった呉服屋。その時は不死川さんもいらしてね。まだ柱ではなかったのだけど」

これでなんの躊躇いもなく呉服屋に足を踏み入れた実弥の考えが理解出来た。
しかし最終選別など実弥の口から一切の説明を受けていない風音の心中は穏やかでないままである。

「そうだったんですね。それで実弥さんがここに……もう何年も人を助けてるんだ……すごいです!ところで最終選別とは何のお話でしょうか?その言葉すら耳にするのが初めてで事情がいまいち飲み込めなくて……」
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