第2章 柱
なおも食い下がる風音に苦笑いを零した実弥は立ち上がって伸びをした。
そして風音の頭を撫でると、自分より……同年代の女子より遥かに痩せ細っている体を片腕で抱え上げて走り出した。
「え!?」
「そんな心配ならする必要ねェ!お前が村人に取られたモン、全部取り返してやる!ちょうどいい、あいつらに俺もむしゃくしゃしてたからなァ!お前は村の外で大人しく待ってろォ」
片腕で抱えられ不安定に揺れる体を実弥の首元に腕を回すことで支えていた風音は、見た目と反して優しい青年の灰色の髪に顔を埋めて小さく頷いた。
「ありがとう。でも貴方の手を痛めることはしないで……人を助ける綺麗な不死川さんの手を汚さないで」
「綺麗な手かァ?まぁ、お前が望むなら手は出さねぇでいてやるよ」
優しい言葉と心地良い揺れに風音は実弥や自分が知らないところで小さく笑みを零して身を委ねた。
そうして村に辿り着き、風音は何故か喜び勇んで村内に入っていった実弥の帰りを一人で待っている。
「お母さんの乳鉢とか乳棒……返ってきらたいいな。お薬作って売って、自分の生活費くらいは稼ぎたい。せめてそれくらいは……」
「おい」
ふいに声が聞こえそちらへ振り向くと……実弥ではなく村の若者たちが数人、刃物をチラつかせながらにじり寄ってきていた。
その恐怖に体を硬直させていると、近くに来た若者数人に拘束されてしまう。
「鬼子、俺らに付き合ってくれよ。いいだろ?化け物に喰われるより楽しいと思うぞ?ま、拒否権なんてねぇけど」
「付き合う?よく分からないけど離して」
拒否する風音の眼前に刃物が突き付けられる。
……従わなければ刺すことを厭わないという意味だろう。
着物の中に隠していた木の棒は屋敷に置いてきてしまった。
抗う術を持たない風音は人気のない場所へ乱暴に引き摺られることしか出来ない。
そして人が決して来ないであろう夜の草むらに放り込まれ体の痛みに顔を顰める暇すらなく、若者たちに体を拘束され実弥に貸してもらった制服の釦に手がかかる。
(何をされるか分からないけど……すごく嫌!足は動く。どうか当たって!)
何をされるのか分からないものの生理的に受け付けない若者の行動を阻止するため、足を蹴り上げようとしたところ……