第4章 お稽古と呼吸の技
大なり小なり鬼殺隊の隊士は事情を抱えていることが大半だ。
知らなかっただけで実弥にも悲しい過去があるように、昨日共に時間を過ごしてくれた杏寿郎や天元にもあるかもしれない。
深く考えないといけない内容だったとしても剣士にすらなっていないので、自分だけ悲しいなど考えている暇があるなら早く鬼殺隊に入って力を付けるのが先だとの考えに至ったのだ。
「それでいいんじゃねェかァ?煉獄に姿見られて逃げてんだ、そんだけ警戒心強けりゃ少しの間姿隠すかもしんねェし。でだ、今日から呼吸の技教えてくんだが、何か先に聞いておきてェことないか?今ならすぐ答えてやれんぞ」
実弥としても今は風音の父親に関しては捜索以外打つ手がないので、今まで通りの対応となる。
今はどうしようもない問題で頭を悩ませても解決せず時間のみが経過するので、当初の予定通りに本日から風音へ技を教えることとした。
そして楽しみなような不安なような……複雑な感情が入り交じった風音の頭に浮かんだ聞きたいことは、かつて自分が父親に教えてもらって放った技のことだった。
「実弥さんがよければ風の呼吸の技を一通り見せてもらいたいです。一つだけ出せた技、何か思い出せるかもしれないので。いいですか?」
「あぁ……そんなこと言ってたなァ。別に構わねェよ。それで一つでも技出せりゃあ儲けもんだ。うっし、柔軟終わったなァ?修練場に行くぞ、木刀忘れんなよ」
出された指示に笑顔で頷き、風音は木刀を実弥を真似て腰に差して準備を完了させる。
「実弥さん!なんだか少し剣士になった気分です!ほら、日輪刀じゃないけど」
「……どこに喜んでんだよ……馬鹿なこと言ってねェでさっさと行くぞォ。木刀で技全部出せるようになったら、次は日輪刀持って技出す稽古あんだ。早く剣士なりてぇなら時間有効に使え」
まぁ……素っ気なく淡白な回答だが、昨日のことがあったので風音からすれば稽古を付け続けてくれるだけで嬉しく、日々の稽古でついた腕の筋肉をさすって先を歩く実弥を追い掛けた。
「見てください!腕も筋肉ついたと思いませんか?もう少しで実弥さんくらいになりそうですよ!」
「あ"ぁ"?鍛錬始めて数ヶ月の奴に追い付かれてたまっかァ。俺に追い付きてェなら明日から稽古増やしてやるよ」
明日から稽古は厳しくなる。