第5章 遮二無二〜伏黒恵〜
「え?……俺が?」
この子、無自覚なイケメンなんだ。
「恵は背が高くて手足長くてスタイル良くて顔もイケメンだし、強いし優しいし最高にカッコいいよ。」
必死になって教えてあげた。
「そんな……」
うわ、恵ってば耳まで真っ赤。
どうしよう、すごく可愛い。
こっちまで照れちゃうじゃん。
「照れちゃって可愛いね。」
「可愛いのは俺じゃなくてあなたです。」
えっ?今……なんて?
「いやいやいやいや、可愛いだなんて……いやいやいやいや……」
さっきの仕返し?
照れるじゃん。
「何、全否定してるんです?そんなちっこいくせに……」
「ち、ちっこい?」
「はい。みやびさんはとても小さくて可愛い女の子で……手とかもすごく小さくて守ってやりたくなる……」
可愛い女の子?
守ってやりたくなる?
「あ、ありがと……」
「で、でも……とても強くて……そ、その……尊敬してます!」
そっか……尊敬してるだけか。
「私も恵のこと、尊敬してるよ。」
あなたは私の光です。
まさかあなたは殴られてる時のオアシスですなんて口が裂けても言えない。
「ありがとう……ございます。」
「じゃあ、そろそろ帰るね。」
「送ります。」
「いいよ、近くだし。」
同じ寮に住んでるんだし。
「一応、俺は男なんで。」
いい事言うね。
「じゃあ、お願いします。」
恵の部屋を出るとパンダと棘に出くわした。
「あれ?どうしたの?」
「今まで真希にしごかれてた。」
げっそりした顔のパンダ。
「しゃ……げ……」
声が枯れてる棘。
「おつかれさま。」
「恵、ちょっといいか?」
パンダが少し離れた場所から恵を呼んだ。
そして2人でヒソヒソ話を始めた。
「何話してるんだろ?」
「おかか。」
棘にもわかんないんだ。
少ししてから恵がこっちに戻って来て、代わりに棘がパンダの方へ行った。