第5章 遮二無二〜伏黒恵〜
中村みやび17歳。
私の生きる道は生まれ落ちた時に決まった。
「みやびちゃんは大きくなったら俺のお嫁さんになるんだよ。」
「およめさん?」
「そうだよ。結婚するの。俺じゃいや?」
「みやび、ハルくん大好き!」
「俺も大好きだよ、みやびちゃん。」
大人達が勝手に決めた結婚。
ウチは御三家に次ぐ伝統と格式のある呪術師の家系。
私は術式を持って生まれてきた。
将来は強い呪術師になり、いい家に嫁いで術式を持つ子を産む事が使命と教えられ育った。
小学校を卒業した後、婚約した。
ハルくんもウチと同じような家柄。
ハルくんとは家が近所だった事もあり幼なじみだ。
私より3つ年上で強くて優しくて。
大好きなハルくんに追いつきたくて必死に修行に励んだ結果、私は高専入学と同時に2級になった。
「ハルくん!」
「みやびちゃん。これからは近くにいられるね。」
「うん。」
当時ハルくんは4年生で2級術師。
高専に入学して五条悟に見出された私は、文字通り血の滲むような努力をして1年の夏には1級推薦の話もちらほら出始める程にまで成長した。
だけどその話は断り続けた。
理由はハルくんへの気遣い。
その頃ハルくんは伸び悩んでいた。
そして彼は焦っていた。
「お前1級推薦の話蹴ってるんだって?そんな気使うな。」
「ごめんなさい。」
昔から目上の男に逆らうなと教えられてきた。
ましてやこの人は将来私の夫になる人。
言われた通り、1級推薦を受け入れた。
そして2年の夏には1級術師になれた。
すぐハルくんに報告した。
手放しで喜んでもらえるとは思ってなかった。
だけどまさか、あんな事をされるなんて……
「お前俺の女だろ?俺より偉くなってどうすんの?」