第4章 純愛〜乙骨憂太〜
「あの時の呪霊の事覚えてる?」
「何となくは覚えてる。」
「あの呪霊がね、最後に液体を浴びせてきたんだけど。それがどうやら媚薬だったらしくて……」
「び、びやく!?ま、まさか私……」
「君の記憶がないのもそのせいだと思う。僕の方は記憶は大丈夫だったみたい。」
「私達……その……」
みやびの言いたい事はわかった。
「うん、ごめん。でも、凄く可愛かった……ごめん、僕なんかで……」
「ううん、憂太でいいの。憂太がいいの。」
「僕もみやびがいい。」
その時、みやびが僕に近づいて来た。
ゆっくり、ゆっくりと。
可愛い唇が近づいてくる。
そして、重なった。
触れるだけのキス。
何故だろう?
何度となく重ねた唇のはずなのに。
まるで初めての時のような感覚。
ゆっくり重なりゆっくり離れてゆく。
「憂太が好き……ずっと好きだった……」
濡れた瞳。
上気した頬。
「僕もだよ。みやびが好きだ!」
抱きしめようとしたその時だった。
「ワオ!いいねえ、若人は。」
再び音もなく五条先生が現れた。
「ゲッ、何で来たの?」
みやびは僕から体を離して言った。
「酷いなぁ、これでも僕はお前のお兄ちゃんだよ?」
「何言ってんのよ!クズ目隠し!」
「大丈夫だよん、憂太には教えたから。媚薬でおかしくなっちゃったお前を頼む相手にはちゃんと教えておかないとね。」
「知ってたの?」
「うん。だって一度見に来たもん。」
「ハア?だったら何でその時連れて帰ってくれなかったのよ!」
いつもの大人しい様子とは全然違う姿を見せるみやび。
これはこれでいいな。