第3章 舌先三寸〜日下部篤也〜
「何言ってんだよ。」
コイツ、相当酔ってんな。
「早くぅ!」
ほっぺた膨らませて怒り出すみやび。
「はいはい、わかったから。可愛い事するんじゃないよ、みやびちゃん。」
言われた通り隣に座る。
「ふふふ、あっくんだぁ。」
俺にもたれかかり、上機嫌でワインを飲むみやび。
飲み過ぎだ。
「土曜の晩に女連れ込んでて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、怒るヤツなんていないから。この前の女は人妻だ。お互い遊びだよ。それにもう終わった。」
「そうなんだ。私、欲しいものっていうかしたい事があるの。」
「何?」
「キス……して、あっくん。」
俺を見つめるみやび。
「いいの?キスしちゃっても。」
「うん、して。」
そんな顔されたらもう我慢できない。
右手を腰に回し、左手は腿の上へ。
そしてゆっくりと口付けた。
軽く口付けてから離れる。
するとみやびが俺の首に腕を回してきた。
「もっと。」
「どうした?酔いすぎじゃないか?これ以上は好きなヤツに取っておけよ。」
「鈍感だね、あっくん。」
そういえばこの前もそんな事を言われたような……
俺、鈍感なの?
何に対して?
「何のこと?」
見つめ合ったまま話す。
「私の好きな人の事。」
「誰だよ?それ。」
「鈍感にも程があるよ。」
まさか……
「お前の好きなヤツって……まさか俺?」
黙って頷いたと思ったら恥ずかしそうに下を向くみやび。
可愛すぎるだろ。
堪らなくなって抱きしめた。
「ごめん。俺、何も気づいてやれなくて……俺もお前が好きだ。」
遂に想いを伝えた。
「本当?」
「本当だよ。信じてくれよ。」
体を離し顔を見る。
「セクハラばっかしてたくせに。」
口を尖らせるみやび。
「それはお前の反応が可愛くて……だから、それだよ、その顔………」