第3章 舌先三寸〜日下部篤也〜
「ところで、何があった?いきなり訪ねてくるなんて。」
私の向かい側のソファに座り、神妙な面持ちの日下部。
「それがね、私虫歯になっちゃったの。」
「虫歯!?」
「そう。だから責任とってもらおうと思って。」
そう言ってコーヒーを一口飲んだ。
「お、お前、その、何、自分が何言ってるかわかってんのか?」
焦り出す日下部。
「わかってるよ。日下部言ってたじゃん、責任とってちゃんとしたキスしてやるって。いやなのぉ?」
追い討ちをかける。
「いや、いやじゃない。全然。」
「じゃあ、して。」
カップをテーブルに置き、立ち上がる。
そして日下部の方へ歩いた。
「本気か?」
日下部も立ち上がった。
「うん。」
向かい合う。
「とりあえず抱きしめてもいいか?」
「うん。」
日下部の腕が私の背中に回り、広い胸に閉じ込められる。
すごくドキドキする。
バレちゃいそうなほどに。
頭を撫でられる。
大きな手。
知り合ってから長いけど、初めてこの人の手が大きい事を知った。
「キスしていいか?」
自分がキスしてやるって言ったくせに何でこんなにも時間をかけるんだろう?
「うん。」
でも、それがこの人の良いところなんだと思う。
ゆっくりと体を離し、日下部に見つめられる。
うわぁ、もうドキドキが止まらない。
胸がキュンキュンする。
まだキスもしてないのにこんなに胸キュンキュンさせてたらそのうち心臓止まっちゃうかも。
頬に日下部の手の平がふれる。
あったかかった。
体温が一気に上がる気がした。
そして顔が近づいてくる。
ゆっくりと。
そしてやっと触れた。
柔らかな唇が。
日下部とキスしちゃった。