第3章 舌先三寸〜日下部篤也〜
「言って……みようかな。」
「じゃあ、早速明日にでも。」
「でも硝子さん、昨日の今日でいきなり虫歯になるっておかしくない?」
「いいのいいの。もし、嘘だってバレたらその時は……もうすぐ誕生日だからキスしてって言えばいいから。」
確かに来週の土曜は私の誕生日だけど……
「もし、拒まれたら私めっちゃ恥ずいじゃん。」
「いくらアイツでもアンタの誘いを断るほどバカじゃないよ。」
硝子さんはそう言ってお酒を飲んだ。
翌日は土曜日。
高専はお休みだから、日下部に電話した。
「あぁ?誰だよ、朝っぱらから。」
いきなり超不機嫌そうな日下部の声。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「ん?……おまっ、みやびか?」
「うん、そうだよ。」
「どした?みやび、朝からなんかあったか?」
「ちょっと話したい事があるんだ。今から家に行ってもいい?」
「ええっ!?ウ、ウチ?今から?」
何故かすごく慌てた様子の日下部。
「ダメェ?」
ワザと可愛く言ってみた。
「いや、ダメじゃないけど急だな。」
「ダメなのぉ?」
更に畳み掛ける。
「ぜんっぜんダメじゃない、ダメなわけないだろ?今どこだ?」
「高専で日下部の住所調べてた。」
「そうか、気をつけて来いよ。」
「うんっ。」
早足に向かう。
胸が高鳴る。
だけど、断られたらどうしようと一抹の不安も抱えている。
日下部のマンションに着いた。
「ごめんね、来ちゃった。」
「お、おお。入れよ。」
いつもスーツにネクタイだけど、今日はTシャツにジーパンというラフなスタイルの日下部。
「お邪魔しまーす。」
日下部の体からはいい匂いがした。
さっきシャワーを浴びたのだろう。
「コーヒー飲むか?」
「うん、いただきます。」
センスのいい家具が並ぶ、お洒落な部屋だった。
テーブルの上に置かれた瓶に飴が沢山入っている。
「ほら、ミルクと砂糖たっぷり入れてやったぞ。」
日下部がコーヒーの入ったカップをテーブルに置いた。
「ありがと。」