第5章 遮二無二〜伏黒恵〜
鼻をくんくんさせる恵。
何だか緊張しちゃうな。
「あ、あの、お風呂にアロマオイル入れたから……多分、それだとおも……ンッ」
キスされた。
まな、軽いキス。
「みやび……」
唇を離して見つめられ、名前を呼ばれた。
切ない表情で。
「どうして?」
何故、こんな事するの?
「何故泣く?」
だってあなたが好きだから。
「優しいにも程があるよ。」
「優しいとダメなのか?」
「何で私に優しくするの?」
「それは……みやびの事が……好きだから……」
信じられない言葉が聞こえた。
「えっ?何言ってんの?」
「だから好きなの。」
「何が?」
頭が上手く働かない。
「みやびが。」
「ふふっ、からかってるの?」
思わず笑ってしまった。
「からかってなんかない。俺は本気だ。みやびが和田の事好きなのは知ってる。だけど、どうしても我慢できなくて。だから……キスした。」
嘘だ……
私の耳、どうかしちゃったのかな?
恵が私の事好きだって言うの。
恵が好きな女の子は綺麗でスタイル良くて年下で……
「私なんてちんちくりんで、美人でもなくて、おまけに年上だよ?」
「それがいいんだろ?ちっこくて可愛い顔なのに年上で強いところがいいんだよ。」
「はぁ……何か……どうしよう……」
「ごめん、悩ませて。和田さんの事好きなのに。」
「恵はね、私の光なの。いつも、殴られて酷い事されてる時……っ、め……ぐみを……思い浮かべる……っ、それで、何とか耐えてた……だけど、恵には私なんか……っ、て思って……」
涙が溢れる。
「俺の事どう思ってるの?」
両肩を掴まれ、見つめられる。
「わ……たし、恵が……好き。」
言い終わった瞬間にまたキスされた。
今度は深いキス。
恵の熱い舌が口内を蹂躙し、私もそれに応えるように舌を動かした。
恵が好き。