第5章 遮二無二〜伏黒恵〜
「やっぱ強いな、みやびは。」
恵が手を差し伸べてくれる。
その手をしっかり掴み、立ち上がる。
「恵は大丈夫?」
「俺は大丈夫。」
「唇切れてるよ。」
「みやび……お前……」
呻きながら横たわるハルくん。
「情けない……」
こんな人を好きだったなんて。
こんな人の為に生きて行こうと思ってたなんて。
何で女が耐えなきゃならないの?
私の方が強いのに。
何だかバカバカしくなってきた。
「あーらら、だいぶ派手にヤッちゃったみたいだね。いつかこんな事になると思ってたんだ。」
どこからともなく悟がやって来た。
「だって恵の事殴るんだもん。」
口を尖らせる。
「あんまり可愛い事するんじゃないよ。ねえ?恵。」
「お、俺は別に……」
「何言ってんの?バカ目隠し。」
本当、悟って何考えてるのかさっぱりわかんない。
「五条さん、伏黒がみやびを……」
ハルくんが起き上がりながら言った。
「お前は少しやり過ぎたね。悪いけど僕が介入させてもらうよ。大事なみやびの為だからね。」
腕組みをする悟。
「介入って?」
「みやび、お前は一人で抱え込み過ぎ。もっと僕を頼りなさい。僕を誰だと思ってんの?」
「御三家一のバカ。」
「ひどっ。まあ、とりあえずみやび、コイツの事は僕に任せてお前の部屋で恵の傷の手当てをしてあげて。」
「わかった。恵、行こう。」
「えっ?う、うん。」
戸惑う恵の手を引いて自分の部屋へ連れて行く。
後ろでハルくんが何か言いかけてたけど無視した。
「ごめんね、ちょっと染みるかも。」
傷を消毒してあげる。
顔を近づけて唇の傷を見た。
「うわあ、結構切れちゃってるね。口に塗る軟膏あるから。」
「みやび、いい匂いがする。」