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月夜の歌姫

第1章 孤児となった少女


サランの食事が終わると男は口を開いた。

「アタシ、シルビアっていうの。アナタは?」

サランは小さな声で「サラン…」とだけ答える。

「お父さんやお母さんは?」

シルビアの言葉にサランはまた涙を浮かべる。

「おか、お母さんは…もぅ…」

ぽたぽたと落ちる涙にシルビアは優しく指で涙を拭う。

「ごめんなさい、野暮なこと聞いて…
アナタ身寄りは?行くとこはあるの?」

サランは首を黙って横に振った。

「あら…」

シルビアはうーんと少し考えた。

「そしたら、うちのサーカスの一員にならない?
裏方でもいいから何とか理由をつけて!
アタシ、団長さんに取り合ってあげるわよ!」

シルビアの言葉にサランはポカンとした。
サーカス団の一員?

盗みでしか生きられなかった自分が?

「行くとこないなら一緒に行きましょ?
それじゃあ早速、団長さんのとこに行くわよ!」

そうと決まるとシルビアはサランの手を取り、団長のいる控え室に向かった。
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