第1章 孤児となった少女
「さ、帰るわよ。おいで」
サランはビクッと身体を震わせ相手を見据える。
「怒ったりしないわよ、ちょっと買い物がわからなかったくらいでね。今度一緒にお買い物行くわよ!」
サランは震える身体を起こし男の服の裾を掴んだ。
「あら?うふふ…シャイなんだから」
男は笑ってサーカステントへと歩いていく。
「シルビアさん、おかえりなさい…って誰ですかこの子!?」
「ちょっと、震えてる子がいてね。
なにか食べ物余ってない?この子痩せすぎよ。
歳の子にしては何も食べられてなさそうなのよね。」
「分かりました、見てきます。」
サーカス団の1人の踊り子がサランを見て驚いた。
ちょっと買い物に行くと言って外出した看板芸人が女の子を連れて帰ってきたのだ。
無理もない。
踊り子はパンとシチューを持って戻ってくると
テーブルの上に置いた。
「シルビアさん…その子誰なんですか?」
「さぁ?」
「さぁって…どこかで拾ったんですか?私は何かあっても知りませんからね?」
「分かってるわよ〜ちょっと悪いんだけど席を外してもらえる?
2人で話がしたいから」
踊り子はむぅっと頬を膨らませると部屋を後にした。
「さぁ?温かいうちに食べちゃいなさい?
大丈夫よ、毒も入ってないわ。」
サランはまじまじとシチューを見つめる。
温め直してくれたのか湯気がふんわりと揺れ美味しそうな匂いがサランの胃袋をつついた。
ぐぅっと身体は素直に鳴く。
サランはスプーンを手に取るとシチューを1口啜った。
野菜とお肉とクリームの旨みが口全体に広がる。
1口食べるとさらにパクッと二口目、三口目と食べるスピードが早くなった。
久しぶりの温かい食事にサランの目からは涙が溢れた。
「おいしい?」
サランは男の言葉にコクコクと頷く。それを見て男は満足したように微笑んだ。