第10章 海の町の子
男の子は何かを話そうとするが一言も喋ることはなかった。
代わりに活発な男の子が無理するなと話してくれることになった。
「俺はラッド、こいつは友達のヤヒム。
こいつとはよく遊んでいたんだけど数日前から喋ることが出来なくて、原因は分からねぇし。
だから魔法使いの杖使えば治せるんじゃねぇかと思ったんだ。」
ベロニカが仕方ないかと言うとセーニャがしゃがみヤヒムと言う男の子の喉を触れる。
セーニャが言うには強力な呪いがヤヒムの喉にかかっているらしい。
「誰がそんな酷いことを…治すことは出来ないのですか?」
サランが俯いた。
「さえずりの蜜という魔法の蜜があればいいのですが…」
セーニャが振り向きサランを見る。
「さえずりの蜜…?それがあれば治せるのですか?」
「えぇ…しかしさえずりの蜜は清き泉の神聖な水でしか作れません。」
セーニャの言葉にラッドが顔を輝かせた。
「清き泉ってここから西にある霊水の洞窟にあるって聞いたことある!
なぁ、ヤヒムの声取り戻してくれないか?
泥棒しておいて頼んでるのはわかってる。
お願いだ!」
全員が顔を見合わせた。
「もちろんです。」
セーニャの答えにヤヒム達は嬉しそうに笑った。
「それじゃあ!サランちゃんは2人を見ててくれない?
セーニャちゃんは蜜作るからいなきゃ困るし、アタシたちはセーニャちゃんを守らなきゃいけないから。いいかしら?」
シルビアの言葉にサランは悲しそうな表情になりかけた。
しかし、すぐに作り笑いを浮かべ任せてくださいと言うとサランとヤヒム、ラッドは町のレストランへ入った。