第82章 双子の運命
みな、その記憶を見て俯いた。
ようやく、言葉が出たのはセーニャだった。
「お姉様…私たちを助けるために…」
セーニャがそっとベロニカに触れると、ベロニカの体は光となって消えた。
「ベロニカさん…!」
「…っ!?」
その光景にサランは思わず声が出た。
カミュもハッと1歩足が前に出る。
セーニャはベロニカに触れた手が震え、その場にへたりと座り込んだ。
それを支えようとサランが一緒になってしゃがみセーニャの肩に手を添えた。
「ベロニカちゃん…
アナタ、最期のチカラを振り絞ってアタシ達のことを…」
シルビアは静かに悲しげにベロニカの体があった木の根元を見つめた。
カミュは背を向け近くにあった木に拳を叩きつけた。
「くそ…!」
マルティナはベロニカとつぶやき、手で顔を覆う。
涙がじわりと溢れていた。
グレイグは何も言わなかった。
何も言わなかったがサランは懺悔の念をグレイグから感じる。
「若い者ばかり死に急ぎおって…」
ロウも悲しげに俯く。
そんな中でも、セーニャは何かを決意したのか立ち上がった。
「…セーニャさん?」
セーニャはベロニカの杖を手に取った。
「お姉様はもういない…
どこにも、いないのですね。
これがお姉様の選んだことなら…
私は全てを受け止めます。」
セーニャはブレインを見つめた。
「お父様とお母様と…里の皆様にも
このことを、きちんとお伝えしなければ」
セーニャはそのまま歩き出した。