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月夜の歌姫

第72章 記憶喪失の少年


サランは甲板に上がるとぐっと背筋を伸ばす。

「んん〜〜!」

「そう言えばこの船はどこに向かってるんですか?」

サランはそう言えば少し寒くなってきたかもと思った。

「確かクレイモランに向かっていると思うよ?
そう言えば…あ、いや。やっぱりなんでもない」

カミュがクレイモランの町に入らなかったことを思い出した。
カミュはまた首を傾げた。

ひゅうっと冷たい風が吹くとサランは上着を羽織る。
なびく銀色の髪と遊ぶように雪が降り始めた。

「……。」

その綺麗な光景にカミュはぽかんとした。

「ん?何あれ?」

シルビアはクレイモランに到着する手前で何かを見つけた。
金色に輝く何かがクレイモランの港を塞いでいる。

「これは…黄金?」

シルビアも甲板に降りてきた。

「何よこれ?
まえはこんなのなかったはずだわ
これじゃあこの先に行けないわね…」

「むぅ…困ったのう…
この先は魔王討伐の手がかりとなる聖地ラムダがあるというのに。」

サランが心配そうに近づく。

「どうするんですか?」

「そうじゃのう…」

ロウがひとつ心当たりがあるのか顔を上げた。

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