第72章 記憶喪失の少年
シルビアが振り返り少し納得しなさそうな顔をする。
「何だかムズムズするわ。
今のカミュちゃんを見たらベロニカちゃん、きっと笑い転げるだろうね…」
カミュはキョトンとした。
「さて!早く目的地に行きましょう?」
パンパンと手を叩いてシルビアはみんなを甲板へと誘導した。
サランもそれに続く。
「カミュさん、行きましょう?」
カミュは少しユキを怯えたように見つめた。
「大丈夫よ。この子は噛んだり人を襲ったりしないわ?ね?ユキ?」
「ガル!」
サランの言葉に返事をするかのようにユキは一鳴きした。
「うわぁ!?」
そんなカミュを見てユキはしょぼんとする。
その様子があまりにもおかしくて、サランはクスクス笑った。
「ユキはみんなと甲板へ先に行ってて?」
サランに促されしぶしぶユキも甲板へ行く。
「あ、あなたは何者なんですか?
魔物を連れて…」
「何者って言われても…
私は…えっと…」
サランは困ったように笑う。
「あぁ、すみません!決して魔物の手先とか言いたかった訳ではなく!」
「分かってる。うーん…とりあえずここで長話もなんだし甲板へ行きましょう。」
サランもカミュと船倉から出てきた。