第72章 記憶喪失の少年
アリスがソルティコに船を回してくれていたのか既に出航はいつでも出来る状態だった。
「グルルル!」
ユキが久しぶりのサランに喜んで近くに来た。
「ユキ!いい子にしてた?」
「ガル!」
サランはわしゃわしゃとユキの全身を撫で回した。
ユキも嬉しそうにグルルと甘え喉を鳴らした。
その様子を見たマルティナは唖然とした。
ホワイトパンサーがサランと戯れている。
「もしかしてあの時のスノーベビー?」
「みたいなんです。世界崩壊後に大きくなってて。でも、とてもいい子なんですよ!」
「そ、そう…」
マルティナは苦笑いを浮かべた。
華奢で虫をも殺さなさそうな女性が魔物と戯れている。
なんとも不思議な光景だった。
「ねぇさん、いつでも出航出来ますぜ」
アリスは全員が乗り込んだのを確認すると船に乗り込んだ。
「ありがとう、アリスちゃん。
さぁて!外海に向けて出発よーん!」
シルビアは舵を握りしめ船を出航させた。