第71章 指輪
コンコンと扉がノックされた。
「さ、サラン?シルビア?いる?」
声はマルティナのものだった。
声を聞いてサランは難しい顔をする。
「えぇ…いるわよ。」
シルビアが応えた。
「入っても大丈夫かしら?」
「ワシらもいるから安心せい。」
マルティナの声の後にロウの声も響いた。
「……。」
サランは俯き布団を握る手に力が入る。
心なしか体も妙に震えていた。
「サラン…開けていいかしら?」
「……」
無言のサランにシルビアは優しく抱きしめる。
「アタシもロウちゃんもいるわ。
それにグレイグもブレインちゃんも。」
サランの瞳が揺れ涙が零れた。
怖いと言う恐怖が溢れてくる。
「シルビアさん。手を握って欲しいです。
あと絶対離さないって約束してください。」
シルビアは驚いた顔をしたが優しく微笑んでサランの左手を握った。
「えぇ…もちろん。」
前にもこんなことあったなぁとシルビアは感じた。
あれは、プチャラオ村で1人。
サランがメルトアの罠にかかってしまったあの時。
シルビアは優しいからそのままでいてと言った。
自分は死にそうになったのに…
それでもシルビアを責めず傍で笑ってくれた。
こんな自分を好きだと言ってくれる。
シルビアの中ではサランの存在がとてつもなく大きくなっていた。