第71章 指輪
サランはシルビアに抱きしめて欲しいとねだった。
両手を広げ小さい頃のようにねだる。
「ウフフ…仕方ない子ね。」
シルビアは嬉しそうに微笑むとベッドに座り優しくサランを抱きしめた。
首筋から愛しい人の匂いがする。
サランはその匂いが好きだ。
抱きしめられている実感と相まって幸福感が満たされていく。
「シルビアさんとこうしているとすごく安心して幸せになるんです。」
シルビアの耳元で囁くと首筋に顔を埋める。
「えぇ…アタシもよ。
大切なのにいつも危険な目に遭わせて…
守ってあげられなくてごめんなさい。」
シルビアはギュッと抱きしめる力を強めた。
「シルビアさん…痛いです。」
「あ…!ごめんなさい!」
シルビアはパッとサランを放すとアザを見つめた。
「大丈夫ですよ、このくらいの痣。
すぐ治りますって。」
シルビアはにこりと笑うサランに対して視線を逸らした。
「みんなのところに戻れる?」
サランは言葉が詰まった。
マルティナのことだ。
「正直言うと…怖いです。」
「…そうよね。」
「すみません…」
ギュッと布団を握りしめた。
服の裾から見える白く細い腕にはいくつか、青紫色に変色している所がある。
(………)
シルビアはその痣に胸を締め付けられた。