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月夜の歌姫

第63章 再会と別れと再出発


2人の話が終わると同時にドアがノックされた。

「オネェさま?ボスが呼んでましたよ?
そろそろ出発する準備がしたいんですって!」

「はーい!今行くわ!」

シルビアが大きな声を出してから立ち上がった。
その時、ふと何かを思ったのかサランの方を向く。

「ねぇ、サラン?あなた…また旅についてくるの?」

「何を当たり前なこと言ってるんですか?
私はずっとついて行きますよ?」

クスクスと優しく笑う。そんなサランとは真逆にシルビアは難しい顔をした。

「こう言ってはなんだけど…サランもパパと一緒にいて欲しいのよね。」

「え?シルビアさん?なんて…?」

「アタシは魔王や邪神ちゃんと戦って命を落としたって構わない。
けれど、パレードのナカマを巻き込みたくなくてパパにお願いしに来たの。パパなら守ってくれるし信頼出来るわ。」

「だから、私も一緒に待っててと?」

「……えぇ。サラン、あなたを失いたくない。」

弱気に俯くシルビアに対してサランが立ち上がり怒鳴り出した。

「じゃあ、シルビアさんが死ぬのを私は黙って見てろってことですか!?
私の気持ちは無視なんですか!?
私だって、魔王と戦って死ぬくらいの覚悟はあります!
私だってシルビアさんには死んで欲しくないです!
それは、サーカスを出る時に見送ってくれたニコス達も同じ思いだと思います!!
1人で勝手に干渉して置いて行って、残された私はずっとそれを引きづらなきゃならないんですか?
私だって少しは戦えます!
そもそも、死ぬ前に魔王を倒せば良いじゃないですか!!」

勢いよく喋ったからかハァハァと息が切れる。
その勢いを見たシルビアはポカーンと口を開けていた。

「勝手に1人で死ぬ気で行かないでください。
生きるために戦ってください。一緒に戦わせてください。」

さっき乾いたばかりの涙がまた自然と溢れ出した。
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