第62章 愛し愛され想い想われ
物音に気づいたシルビアは目を覚まし音の正体を確かめるべく屋敷を回る。
しかし、皆がいる部屋に異常はなかった。
まさか?と思いサランが眠る部屋に向かうと、そのベッドにサランがいなかった。
どこへ行ったのだと心臓が苦しく激しく焦らすが焦りと同時に微かだが知った声が海風に乗り聞こえてきた。
そこで急いで声を頼りに進んでいくサランらしき女性が歌っていた。
「サラン…?じゃない。あなたは誰?」
サランとは明らかに表情が違うことに気づく。
「シルビアさんですか?サランがいつもお世話になってます。」
女性は優しく微笑む。サランの顔だからサランであるはずなのにどこか違う。しかしその人の微笑み方はサランにそっくりだった。
「まさか…そんなことは…!でも…」
シルビアはその人物が誰なのか悟ると驚きを隠せなかった。
「サランのお母さん…?」
「えぇ、ずっとそばにいました。
まだ幼く弱かったこの子を放っておけなくて。
でも、子どもって親が思ったより早く逞しく育つものだったのね…。」
ふふっと自分の失態を嘲笑うかのように肩をすくませた。