第62章 愛し愛され想い想われ
サランの体を使って話す母親は月を見上げると一筋の涙を流す。
「この子を守りたくて付けてもらった加護も歌の力もこの子は優しくみんなを守るために使っていた。
きっとシルビアさんがそれを教えてくれたのですね。
この子にとって必要のない心配事でした。」
「……じゃあ今までのことも…」
「もちろん、知っています。それと、全部私があの子を守ろうとして加護の力を使わせてました。
でもサランは人のために使おうとしてたんですよね。
あの…シルビアさんは、サランを愛してますか?」
威圧的な表情ではなく優しいが真っ直ぐな瞳でシルビアを見つめる。
「はい。アタシはサランのことを愛してます。
命に代えてもサランのことは守っていくつもりです。」
シルビアは片膝を付き騎士として誓う時のようにお辞儀をする。
その言葉を聞くと安心したように彼女は微笑み。
「やっぱりいらない心配が過ぎてたのね。
シルビアさん。ありがとう。」
サランの体は光に包まれやがて月へ帰るように光は空高く舞い上がる。
きっと命の大樹へ戻るための準備なのだろう。
シルビアはそれを見て(早く魔王を倒さなくちゃサランのお母様は)と心に誓った。
光が消えたあとサランの体はカクンと倒れかけるがシルビアが抱きとめた。