第60章 運命とは時に残酷である
ノックをすると先程の女性が返事をする。
入っていいと言われたのでドアを開けると目の前によく見知った寝顔に声を失った。
傍にはホワイトパンサーがいたがそれがあの時のスノーベビー、ユキだということが何となく分かる。
死んでいるわけではない、ただ深い眠りに陥ってるだけ。しかし、先程の話を聞いた後だったからシルビアの胸はキュッと締め付けられるような息苦しさを感じる。歩いている時に教会で一命を取り留めたと聞いて安心はしていたが、それでも二度とこの腕に抱きしめることが出来ない不安があったと思うと涙が止まらなかった。
ベッドの前に座り優しくサランの頬を撫でる。
いつもならくすぐったいと照れたように笑う彼女だが今は規則正しく息をするので精一杯のようだ。
悲しく、悔しい、やるせない気持ちを消化できずシルビアは俯く。
「パパ…ごめんなさい。2人きりにさせてほしい…」
ジエーゴはシルビアとサランを残し部屋を後にした。