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月夜の歌姫

第60章 運命とは時に残酷である


戦う時は歌うなと言ったはずなのに…。自分のパパや町のみんなを守るために…

シルビアの目から涙がポロポロ溢れた。
ブレインはじっとシルビアを見つめる。
グレイグは顔を逸らした。

「パパその人の名前って…」

聞こうとしたがベッドの床頭台に短剣が置かれているのが見えた。
名前を聞くまで信じたくなかった。確証なんてなければいいのにと願った。
彼女じゃありませんようにと祈った。
しかし、彼女に「お守り」として渡したそれがシルビアの思いを打ち砕いた。

「パパ、その短剣…」

ジエーゴはシルビアが指さした短剣を見てまた1つため息をついて手に取る。

「そいつが肌身離さず持っていた短剣だ。」

ジエーゴから短剣を借りるとシルビアは膝から崩れ落ちた。

「………サラン!」

ポタっと短剣にはめられてる真珠に涙が落ちる。

「ゴリアテ…知り合いなのか?」

泣きながらシルビアはコクコクと頷く。

「あ、アタシの…」

声が震えてシルビアはその先の言葉が出せなかった。

「ゴリアテ…会うか?」

ジエーゴの言葉にシルビアはハッとして顔を上げる。

「会えるの?」

ジエーゴはゆっくり立ち上がりドアの前へと来る。

「……ついてこい。」

シルビアはジエーゴに案内され客室の前にやってきた。
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