第57章 歌姫とホワイトパンサー
サランは通された部屋の椅子に座ってお茶を受け取る。ジエーゴが1口お茶を啜ってから話を切り出す。
「さっきは町のヤツらが無礼なことしてすまなかった。ところでお前さんはどっから来たんだ?少なくともただ者ではないだろう?」
サランは手の中でコップの暖を取りながら言葉を選ぶ。どこから話してどこまで話そうか考える。勇者と共に旅をしてたなんて言っていいのか、どこまで黙って入ればいいかをゆっくり考える。
でも、大好きな人が言うことはきっと決まってる。
「…私はサラン…ただのしがないサーカス団員です。
えっと…この子は私のサーカスで芸をしていた友達です。」
ユキはサランの言葉に「え?」という拍子抜けした顔をする。するとジエーゴは笑ったあと怖い顔になった。
「何を隠したいのか分からないが、話せるところは話してほしいんだが?」
その気迫にサランはたじろいだ。
「えっと…ほんとにそれだけです…。
私はそれ以上でも、それ以下でもないですよ…
ところで、この世界は今どうなってるんですか?」
サランの質問にジエーゴはすごくイヤそうな苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「どうもこうもねぇな。大樹が落ちてからこっちの地方ではデケェ地震が起きて空に太陽が昇ることは無くなっちまってるし、海は生き物が住める環境ではなくなってるし。自分のことでみんな精一杯だ。
この前も誰かが魔物に襲われてしまったという話も聞いている。」
サランは絶句した。