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月夜の歌姫

第56章 崩壊


サランはホメロスが間合いを詰め触れられる程、近づいた瞬間に扇の舞を繰り出した。

「…ちっ。」

先程、バリアみたいなのが見えた。
それがホメロスを包み攻撃が効かなかった。
それなら相打ち覚悟で攻撃するしかないとサランは見つめた。

サランの考えは当たりだった。
2回ホメロスの体を扇がかする。

「なかなか、聡明な人だ。
しかし、我々も時間が無いんだ。」

ホメロスはサランの後ろで威嚇するスノーベビーをチラリと見た。そして、右手を突き出したと思ったら闇の力を溜め一気に放つ。

「ダメ…!」

ユキを庇い抱きしめサランは背中でその力を受けてしまった。

「うぅ…」

痛みと苦しみに気を失いそうになる。

「ふん、魔物を守って傷つくとは愚かだ。」

ホメロスは倒れ込むサランの横を通り過ぎようとした。

「…?」

ガシッと足を掴まれる。

「まだそんな力があったのか」

サランは息を切らしながらホメロスの足を掴む。

「い、いかせ…ない。
ブレイン…さんが…闇払いの…ものを…」

ホメロスはその執念に呆れたため息を放った。

「だったら貴様の仲間がどうなるかその目で見るといい。」

ガっと倒れるサランのお腹に蹴りを入れた。

「うぐ…!」

痛みにサランはホメロスの足から手を離しうづくまった。
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