第55章 前夜
キャンプを張っているといつの間にか日が沈み空には輝く月と命の大樹が並んでいる。
「こうして、間近でみるとなんだか不思議な感じですね」
サランが空を見上げその茶色い瞳に光を写す。
それを見たベロニカも大樹を見上げた。
「そうね…なんだかあたしも緊張してきちゃった。」
ベロニカがぽつりと呟くとそれに伴いみんなも空を見上げる。
「ねぇセーニャあの曲弾いてよ。故郷から伝わるあの曲を。」
ベロニカに頼まれセーニャは竪琴を取り出した。
「セーニャさん、竪琴たしなむんですね」
サランに微笑みセーニャは竪琴を奏で始めた。
「命の大樹って夜だとこんなに幻想的にみえるのね。
私たちの命もあの葉の1枚だと思うとなんだか不思議な気分になるわ」
「誰かが息絶える時、葉が散り
誰かが生まれた時、歯が芽吹く。」
マルティナが余韻に浸っているとベロニカが呟くようにとなえた。
「私たちの葉はどれなんでしょう?」
サランが青々と生い茂る葉を見つめた。