第5章 ファーリス杯の前夜
ニコスの踊り、空中ブランコ、サランの歌。
それぞれ得意なものを披露していき、いよいよシルビアの番がやってきた。
「お次は!流浪の旅芸人!シルビア!
摩訶不思議なショーをご覧あれ!」
シルビアは暗くなったステージに高いところから飛び降りるとスポットライトを浴びた。
どこから取り出したのか1つのボールを持ったと思ったら6つのボールでジャグリングをする。
ボールくらいなら手品と言えば種かなんかがあるのだろう
しかし高く投げたボールは大きなナイフとなる。
「いっつも思うけどシルビアのねぇさんて錬金術師?
どうやったらあんな芸が出来るわけ?」
ステージ横から見ていたニコスがムゥっとほっぺを膨らませる。
「はぁい!!」
ジャグリングをしていたシルビアは突然ナイフを観客へと投げる。
観客はきゃあと小さな悲鳴を上げる。
かと思ったら口から火を吹きナイフは跡形もなく消え去った。
「大切なお客様に怪我などさせません
楽しんでいただけましたでしょうか?」
シルビアの挨拶に観客はわぁっと歓声を上げた。
(やっぱりすごいなぁ…シルビアさんて…)
シルビアの技をなんとしても知りたいニコスとは反対にサランはうっとりとシルビアを見つめていた。
そんなサランを見てニコスは
(これが恋してないなんて誰が言えるの?)
と心の中でやれやれと思った。