第5章 ファーリス杯の前夜
サランは洗濯物を洗い直すといいシルビアとニコスから離れ町に出た。
深いため息が口から零れる。
(好きじゃないと言えば嘘じゃないし…
でも私とニコスの言う好きって違う気がするし…)
そんなこと考えながら歩いているとこの国にやってきたばかりなのだろうか
茶色い髪をした少年と青いつんつんと髪を立たせた少年、金髪の少女とその少女をもっと幼くした女の子4人が城へ向かうとこを見た。
(彼らもファーリス王子のファン?)
サランは酒場へと向かった。
酒場に着くとマスターがサランを迎える。
「お!サラちゃんじゃないか?
どうだい調子は?」
「うん、まぁまぁかな?」
「今夜も歌を披露してくれるんだろ?
すごく楽しみなんだよな」
ニコニコとしたマスターがグイグイとする。
そんなマスターにサランもありがとうと微笑む。
しかし、少し元気のなさそうなサランを見ると考えるように話しかけた。
「何か、良くないことがあったのかい?」
「ううん…そうじゃないんだけど…」
「ほぉ?じゃあなんだろうな?」
「うーん…マスターは好きになるとかってある?」
「好き?」
こくんと頷きサランは続ける。
「なんか、ニコスが言うには私がシルビアさんに対する気持ちは恋心だーとか言ってて…。
私はこの世界に引っ張ってくれた人、泥棒しなきゃ生き残れなかった人生を変えてくれた恩人て思ってたんだけどね?」
「ほぉ?サラちゃんとしては恋とは違うと?」
「うん…そもそも恋って分からなくて
でも……最近シルビアさんのことを考えると
何だか胸がチクチク痛いのよね」
サランの言葉にマスターは豪快に笑った。
「ハッハッハ!若いなぁサラちゃんは!
いや、笑ってすまない。
そう悩むようになったとはなぁ…ハハハ」
「なによ?」
「いや、いずれ分かればいいさ。
そうきっと遠くない未来に分かると思うぞ?
とりあえずこれでも飲んで落ち着きなさいな」
サランの前に1杯のジュースを置いた。
数種類のフルーツが混ざったサランのお気に入りのジュースだ。
サランはそれを飲み干すと代金を払い「また来るね」とマスターと別れた。