第1章 孤児となった少女
「サラン!」
母親の声と同時にヒュンと何かが飛んでくる音が混ざった。母親は少女をしっかり抱きしめている。少女は何が起きたか理解が出来なかった。
「お母さん?」
馬はそれでも走っていく。
「サラン…何があっても馬を走らせて…ぜった…い生き…のび…る…」
そう言い終わらぬうちに母親は力無く少女に寄りかかる。
「お母さん!寝たら落ちちゃうよ!」
馬はそこそこあるスピードで町を抜けていく。前を向くとまだ崩れてない建物が目の前に迫っていた。
「きゃあ!!」
慌てて少女が手綱で馬に横へ行くよう引くと遠心力か揺れなのか母親の身体がどさりと馬から落ちた。
慌てて止まろうと手綱を引く。
馬は思ったように止まってくれたが少女はそれと同時に悲鳴を上げた。母の背中にはボウガンの矢が刺さっておりそこから血が流れていた。
「お、おか、おかあさん!!お母さん!!」
母親は返事をしない。
『おい!ガキの声が聞こえたぞ!』
『反対方向に逃げたんだ!』
『捕まえろ!』
遠くで大人の声が聞こえた。
少女は母親も一緒に連れていきたい、離れたくない気持ちと涙を堪え馬を走らせた。