第38章 壁画の中の世界
しかし、刺すほどの力がないためまたぐたりとしてしまった。
ーーカカ、まぁいい。せいぜいあがけ、愚か者
時期にまた綺麗な塗料と混ぜてやろう。
カカカカカカ
サランは両手を茨に巻き付かれ、まるで十字架にかけられたかのように持ち上げられた。
意識は失っていないものの抵抗する力がなく、悔しさと悲しさで涙をこぼした。
何も出来ない自分が悔しくていたたまれない。
結局自分は守られてばかりだったのかと責める。
(サランには歌があるじゃない!)
ふと、幼き日にいつか言ったシルビアの言葉が脳裏を過ぎる。
(まだ、ある!私には歌がある)
ぐっと手に力を入れ痛みで浅くなる呼吸を落ち着かせゆっくりと深呼吸をする。
深く吐いたあと、小さく息を吸うと唇を震わせた。